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リリース (野生復帰) 後のモニタリング

  • 2 日前
  • 読了時間: 6分

オランウータンをリリースすること。それは、リハビリテーションの最終章のように思えるかもしれません。

ニャル・メンテンやサンボジャ・レスタリといったリハビリテーション・センターで何年も過ごし、木登りや食べ物の探し方を学び、ジャングルスクールやプレリリース島での暮らしを通じて野生復帰のための準備と訓練をしてきたオランウータンたち。

彼らはついに、本来の家である広大な自然へと還っていきます。

しかし、BOS財団の現地の環境保護チームにとって、その瞬間はもっとも重要な新しい章の始まりを意味します。


それは、リリースされた一頭一頭が、本当に野生の力で生き抜いていけるかを確かめるというミッションです。私たちは、彼らをただ森に還して終わりにするわけではありません。


インドネシア・中央カリマンタンの深い森の奥、BOS財団のリリースモニタリングチームは、365日毎日活動を続けています。

BOS財団のモニタリングチームは、ブキット・バティカップ保護林からブキット・バカ・ブキット・ラヤ国立公園にいたるまで、リリースエリアに点在するいくつかのキャンプをベースに活動しています。


森の中のささやかなキャンプで、チームの1日はまだ日が昇る前の暗闇から始まります。生い茂る熱帯雨林をかき分け、何キロメートルも続く調査路を一歩一歩進んでいくのです。


森の中でシグナルを探して

リリースされたオランウータンたちは、小さな発信機を身に着けています。この発信機からの電波が、彼らを見つける最初のヒントになります。


モニタリングチームのメンバー2人が、調査路をゆっくりと歩いていきます。先頭を歩くトラッカーの手には、GPS機器、アンテナ、そして受信機。数百メートル進むごとに立ち止まり、受信機から流れる独特の音にじっと耳を澄ませます。

…ピピッ、ピピッ。

待ち望んでいたシグナルを捉えた瞬間、その場の空気が一気に変わります。近くにオランウータンがいる!

ただ、オランウータンを見つけるのは、画面に表示された座標を読み取るほど簡単なことではありません。チームは五感のすべてを研ぎ澄まします。生い茂る木々を見上げ、古い巣の跡を探し、かすかな匂いを感じ取り、はるか高い枝が揺れる音に耳を傾けるのです。

そして、ついにオランウータンの姿をその目に捉えたとき、本当の仕事が始まります。


あるオランウータンの1日を追いかけて

姿を確認できたら、チームは捜索から観察モードへと切り替えます。アンテナを畳み、追跡機材を仕舞って、すべての視線をそのオランウータンへと注ぎます。


出会ったその瞬間から、その子が夜の巣を作るまで、あらゆる行動が細かく記録されます。何を食べているか、どう移動しているか、遊んだり休んだりしているか、他のオランウータンとどんな関わり方をしているか。どの果物を選び、どんな風に食べているかといった小さな1コマさえも、野生復帰の成功を支える大切なデータ(科学的情報)になるのです。


観察は、オランウータンの自然なリズムに合わせて1日中続きます。木々を渡り歩きながら器用に食事をする時間もあれば、1本の木にとどまって何時間ものんびり過ごす時間もあります。ときには、野生の感覚を取り戻しつつあるオランウータンが、人間に気づいてキス・スクイーク(チュッチュッと唇を鳴らす、警戒の鳴き声)で不快感を示すこともあります。そんな姿も、彼らが野生で生きている証拠です。


もし母親と赤ちゃんに出会ったら、チームは役割を分担します。1人が母親を追いかけ、もう1人が赤ちゃんの成長や行動を記録するのです。こうした観察を通じて、生きるためのスキルが次の世代へとしっかり受け継がれているかどうかを確かめています。


モニタリングチームの1日は、オランウータンが夜用の巣を作り、眠りにつくことでようやく終わりを迎えます。GPSで位置を記録し、巣が作られた木を確認すると、チームは静かにその場を離れます。森をまた、本来の静寂へと返すために。


オランウータンだけでなく、森の健康を読み解く

オランウータンを見守るということは、彼らだけを見るということではありません。オランウータンが住む森そのものの状態を理解することも同じくらい大切です。


そのためチームは毎月、季節ごとの植物の変化を調査し、森にどれくらい食べ物があるかを評価しています。決められたルートにある木々を観察し、新しい葉の芽吹き、花のつぼみ、開花、そして果実の実り具合を記録していくのです。


このデータは、この森は、季節が変わっても彼らが生きるための十分な食べ物があるか、を確認するためにとても重要です。なぜなら、豊かな森こそが、オランウータンの野生復帰を成功させるための揺るぎない土台だからです。


さらに、定期的な巣の調査も行っています。発見されたすべての巣は、彼らがどう移動し、どんな場所を好み、森の空間をどう使っているかを知るヒントになります。

巣の構造や状態をシンプルに観察するだけでも、人間の目には滅多に触れることのない、オランウータンたちの隠された夜の暮らしの豊かなストーリーが見えてくるのです。



森の中に設置されたもうひとつの目

すべてのオランウータンが、すぐに見つかるわけではありません。中には、調査ルートから遠く離れた場所まで移動したり、人間が滅多に足を踏み入れない奥地を好むオランウータンもいます。そんな彼らの見守りをサポートするために、要所に自動撮影カメラ(カメラトラップ)を設置しています。


この《静かな目》は、人間が直接見ることのできない野生動物たちのリアルな姿を捉えてくれます。ときには、長い間姿を確認できていなかったオランウータンが元気に暮らす写真が写っていることもあり、チームに新しい希望と、次の追跡計画のヒントを届けてくれます。


また、カメラはオランウータン以外の多様な野生動物の姿も記録してくれます。それは、彼らをリリースしたこの生態系が、今も豊かに息づいていることの素晴らしい証明でもあります。


森からデータへ、そしてデータから未来へ

キャンプに戻っても、モニタリングチームの仕事は終わりません。フィールドで書き留めたノートはすべて、研究データベースに入力されます。記録されたすべての行動、食事をした木、巣の場所が、リハビリテーションの成果を測る大きなパズルの一片となります。


これらのデータを通じて、チームはリリースされたオランウータンたちが自立して生きられているか、十分な食べ物を見つけられているか、きちんとした巣を作れているか、そしていつかこの野生の中で新しい命を育めるかを見極めています。


私たちが目指す野生復帰のゴールは、オランウータンを森に還して終わりではありません。

彼らがその森にしっかりと馴染み、本当の意味でそこを居場所として、生きていけるようになることなのです。


高い木の上でのびのびと生きるオランウータンたち。その背景には、毎日地道に森を歩き、小さな電波を追いかけながら、彼らの未来を守ろうとするスタッフの姿があります。

次の世代のオランウータンたちも、ずっとこの豊かな森で暮らしていけるように――そんな願いを胸に、活動を続けています。



 
 
 

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