オランウータンモニタリング調査および生物多様性調査
- 8 時間前
- 読了時間: 5分
クジェ・セウェンの森の鬱蒼とした木々の奥深く、緑の天蓋(キャノピー)の下を、黙々と歩く人々がいます。この森がこれからも命を育み続け、ここに暮らす生き物たちが安心して帰れる我が家を守るために、彼らは歩みを進めています。
彼らは、PT Restorasi Habitat Orangutan Indonesia(RHOI)の生物多様性部門チームであり、リリース後モニタリングと研究・生物多様性による合同チームです。
このチームは、個々のオランウータンの監視、巣の記録、そして森の木々の中で自由に暮らす様々な鳥類の観察など、生物多様性の目録調査という、極めて重要な責任を担っています。
彼らにとって森を守るということは、そこに依存するすべての命を守ることを意味していいます。
遠征の準備と、旅の始まり
遠征は2026年2月8日、チームが機材の入念な準備を始めたことから幕を開けました。バックパックに詰め込まれた一つひとつの荷物には、日々の物資だけでなく、命を守るという大きな責任も一緒に詰め込まれていました。
翌2月9日、チームはキャンプ地を目指し、PT RHOIの租借地内にある深い森へと一歩を踏み出します。
キャンプ地までの道のりは、決して短いものではありません。果てしなく続く森の小道を歩きながら、メンバーの頭には、川のルートから自分たちを支えてくれているもう一つのチームの姿がありました。あらゆる保全活動において、運用が安全に行われるためには多くの人々が関わっています。険しい川をボートで行き交い、人や物資を運び続けるオペレーターたちもまた、この活動を支えるかけがえのない仲間なのです。
何キロメートルもの道のりを歩き通した夕方近く、チームはついにキャンプ地に到着し、テントの設営を始めました。その夜は、持ち寄った食材で簡単な食事を作りながら、翌日の作業計画を夜遅くまで念入りに話し合って過ごしました。
新ルート トランセクトL1の開拓と、現場の試練
森の中には、朝の訪れを告げるニワトリの鳴き声はありません。しかし、彼らの身体は日の出前に目覚めることに、もうすっかり慣れていました。
朝食とお弁当の準備をすませ、時計の針が午前8:00を指したとき、作業が開始されました。この日の目標は、調査用の新しいルートであるトランセクト(調査線)L1に到達し、これからの活動のために道を切り拓くことです。
まずは、目の前に生い茂る草木を払い、人が通り抜けられる小さな道を拓くことから始まりました。最初はそれほど遠いルートではないと考えていましたが、実際のジャングルは甘くありません。長く、体力を激しく消耗する道のりが続きました。川沿いを歩き、小さな湧き水をいくつも渡り、足を滑らせそうな急な丘を登るたびに、体内のエネルギーは少しずつ削られていきます。
それでも長い歩みの末、チームはついにトランセクトL1の入り口へと到達します。時間を節約するため、ナビゲーターが先頭に立って必死に道を切り拓き、残りのメンバーは警戒を怠ることなく周囲の環境を観察し続けました。
15:00頃、チームはついにルートの終点へと達します。しかし、安堵したのも束の間、山の天候が急変しました。突如として強風が吹き荒れ、続いて激しい雨が容赦なく森に降り注いだのです。安全を最優先にし、翌日の活動に向けて体力を温存するため、チームは即座にキャンプへ引き返す決断を下しました。
興味深いことに、帰りの道のりは不思議なほどずっと早く感じられました。17:00頃にキャンプに到着したとき、全員が完全にずぶ濡れ状態でしたが、誰一人として怪我をせず、健康な状態で戻れたことに、誰もが心から深く感謝しました。
トランセクトK1の横断と、果てしないシダの原野
翌2月10日、チームはもう一つの新しいルート トランセクトK1の開拓に向けて動き出しました。入り口までの道のりはキャンプからそれほど遠くなく、旅の始まりを告げるメンバーの足取りは、心なしか軽く感じられました。
作業方法は昨日と同じです。ナビゲーターが先に立って道を切り拓き、残りのメンバーがそれに続いて道すがらの観察を行います。旅の中盤、チームは息をのむほど美しいエリアに差し掛かりました。目を見張るほど広大なシダの原野が、視界の開ける限りに広がっていたのです。その見事な景色に、彼らは足を止め、しばし休息をとりながら森の静かな景色を楽しみました。
しかし、自然の美しさは、時に牙をむきます。GPSが示す進むべきルートは、険しい地形に囲まれた、まさにそのシダの原野の真ん中を直進していました。ナビゲーターは何とか代替ルートを探し、一時は通れそうな道を見つけたものの、すぐに両側から生い茂る厚いシダの壁によって行く手を完全に阻まれてしまいました。
チームは、大人の背丈ほどもある密集したシダの狭い隙間を、ゆっくりと、少しづつ進むしかありませんでした。シダの原野の中で何時間も奮闘したものの、どうしても出口を見つけることができません。時間は刻々と過ぎ、15:00を迎える頃、チームはトランセクトK1の終点に今日中に到達することは不可能であると悟りました。
無念さを抱えながらも、彼らは暗くなる前にキャンプに戻る決断を下します。その日は、目標を達成できなかったという深い疲労感と、悔しさのなかで静かに幕を閉じました。
すべてのデータの背景にある、それぞれの旅路
オランウータンのモニタリング遠征や生物多様性調査は、単なる数字やデータシート、あるいは報告書を埋めるためだけのものではありません。収集されたすべてのデータの背景には、泥だらけになって歩いた長い旅路があり、険しい地形があり、予測不可能な天候があり、そしてこの命を守るというチームの無私の献身とエネルギーが存在しています。
これらすべては、野生に放たれたオランウータンたちがこの先も継続して見守られ、クジェ・セウェンの森が野生動物や植物にとって安全な我が家であり続けるための、より大きな取り組みの一部なのです。
計画が思った通りに進まないこともあれば、ルートを最後まで歩ききれないこともあり、目標がいつも達成できるとは限りません。しかし、何百年もの時間をかけてゆっくりと育っていく森のように、保全活動にもまた、果てしない忍耐、持続力、そして仲間との協力が必要とされます。
なぜなら、彼らが森に刻むすべての一歩は、すべて同じ一つの未来へ向かっています。
それは、この美しい森を残すこと。そして、ここに生きるすべての命が、これからもずっと帰るべき場所を持てるようにすることです。










コメント