シシとシジャルから学ぶ、野生で生きる術
- 4 時間前
- 読了時間: 3分
昨年1月、BOS財団のリリース後モニタリングチームは、ブキット・バティカプ保護林で重要な任務にあたっていました。それは、リリースしたオランウータンたちがどのようなルートで移動しているかを、無線追跡によって調査することです。
予定していたルートの調査を無事に終え、チームはモーターボートでキャンプへの帰路につきました。しかし、ふとチームの頭をよぎったのは、前日に姿を確認したものの、その後パタリと無線連絡が途絶えてしまったオランウータン、マルディアントのことです。
チームはその場で一つの決断を下しました。キャンプへ戻るのを後回しにし、マルディアントの行方を追って、さらにジョロイ川の下流へとボートを進めることにしたのです。
予期せぬ、新しい命との出会い
捜索を始めて間もなく、思いがけない出会いが待っていました。川の岸辺近くで、1人のオランウータンが、小さな赤ちゃんをぎゅっと抱いている姿を発見したのです。
赤ちゃんは母親にべったりと寄り添い、体格から見てまだ1歳にも満たない様子。慎重に観察した結果、母親は以前から知られているシシであることが判明しました。チームは、この幼い赤ちゃんにシジャルという名前を付け、モニタリングを開始することにしました。
観察1日目、母親という絶対的な安心感
観察は、母子が夜の巣を作るまで続けられました。母シシは、高い樹冠でサンクアンという木の実を黙々と食べていましたが、赤ちゃんシジャルはほとんどの時間を授乳と、母親の腕の中で過ごしていました。
彼らが寝床に選んだのは、川岸からわずか10メートルほどの場所。過去のデータからも、リハビリを経て野生に戻ったオランウータンは、水が近く食料が豊富な河畔地域を好む傾向があることがわかっています。
樹上での成長と、食生活の変化
翌日、早朝5時過ぎからモニタリングを再開しました。母シシの食生活は驚くほど多様です。サンクアンの実だけでなく、アラ、ツル植物の葉、樹皮、さらには若いタケノコなど、森の恵みを次々と口にしていきます。
一方、赤ちゃんシジャルの行動にも小さな変化が見られました。母親に甘えるだけでなく、シシの真似をしてサルオイやリスムといった野生の実を、自分でも少しずつ試し始めたのです。
これは、野生で生き抜くために何が食べられるのかを学ぶ、非常に重要な一歩です。
この観察が持つ重要な意味
3日間の観察の最後、シシとシジャルの親子は、地上20メートル以上の高さがあるバジュンの木に夜の巣を作りました。これほどの高さがあれば、外敵に襲われる心配のない安全な場所となります。
今回の観察は、野生の母親がどのように子育てを行い、子がどのように生存術を学んでいくのかを具体的に示す貴重な記録となりました。また、ジョロイ川沿いの森が、彼らにとって食料が豊富で安全な、極めて重要な生息地であることも改めて証明されました。
当初は一頭の個体を探すことから始まったこの調査は、最終的にはそれを遥かに上回る、大きな成果を得ることができました。
野生の母親がどのように子どもを守り、そして幼い子どもがどうやって生きる術を学んでいくのか。その貴重なステップを、私たちは間近で確認することができたのです。
今回の出来事を通じて、彼らが安心して暮らしていくためには、豊かな森を守り続けることが何よりも大切であると、改めて強く実感しました。












コメント