乾季を生き抜くオランウータンの知恵と適応力
乾季を迎えたボルネオ島(カリマンタン島)の熱帯雨林では、川や水路の水位が下がり、生き物たちが利用する水場の環境にも変化が現れ始めます。こうした季節の変わり目は、森そのものだけでなく、オランウータンをはじめとする野生動物たちの暮らしにも影響を与えます。
オランウータンにとって乾季の訪れは、何百万年も前から続いてきた自然のサイクルでもあります。彼らは水の量や食べ物の変化に合わせて、さまざまな知恵を働かせながら、この季節をうまく乗り切ってきました。
今回は、乾季を過ごすオランウータンたちの適応力と、この時期に現場の保護チームがどんな対応をしているのかをお届けします。
川の様子が変わると、森の歩き方も変わる
川はオランウータンが生きていく上でとても大切な場所です。喉を潤すだけでなく、森の中を移動するときのルートにも関わっています。乾季になって水位が下がると、いつも通っていた場所の景色や足場が変わり、移動の勝手も違ってきます。
また、場所によっては普段食べている木の実が実りにくくなることもあります。そのためオランウータンたちは、森で見つかるほかの食べ物を探しながら、日々の行動パターンを臨機応変に切り替えているのです。
自然の変化への適応
オランウータンは、まわりの環境に合わせて柔軟に行動を変える適応力を持っています。果物が少なくなると、柔らかい若葉や木の皮の内側、ヤシの新芽、昆虫などを代わりに食べるようになります。
さらに、オランウータンはとても記憶力が優れています。森のどこに実がなる木があるか、乾季でも水が残っている場所はどこかをしっかり覚えているため、季節が変わって食べ物が減っても、ちゃんと食べるものをを見つけ出すことができます。
時には、ハッとさせられるような問題の解決方法を見せてくれます。たとえばバレンティノというオランウータンは、川を渡る前に木の棒を使って水の深さを測り、安全に渡れるかどうかを自分で確かめていました。野生の中で生きていくために、身の回りにある道具を使って状況を判断できる、オランウータンの知性の高さがよくわかるエピソードです。
泥を塗って、暑さや虫から身を守る
オランウータンはこのように食べ物を変えるだけでなく、顔や体に泥を塗る姿が見られることもあります。詳しい理由は今も研究中ですが、体を冷やしたり、照りつける日差しから肌を守ったり、虫刺されを防ぐための知恵ではないかと考えられています。
乾季のプレリリース島の管理
オランウータンたちが自然のリズムに合わせて暮らす一方で、私たちBOS財団にとっては、乾季は現場の管理に特別な注意が必要な時期でもあります。
オランウータンたちが野生復帰に向けた最終訓練を行う「プレリリース島」は、周囲を流れる川が天然の柵の役割を果たしています。この川があるおかげで、オランウータンたちは安全なエリア内で野生復帰に向けた自立した生活を送ることができます。ところが、乾季に川の水位が著しく下がってしまうと、島と対岸との距離が近くなり、オランウータンが島から外に出てしまうリスクが高くなってしまうのです。
そのため、現地のチームはこの時期になるとパトロールの回数を増やし、水位の変化に合わせた安全対策をしっかり行っています。オランウータンたちが安全に、野生復帰の訓練を続けられる環境を守るためです。
自然と共に適応する
乾季の訪れは、熱帯雨林の生態系における自然の現象です。オランウータンたちは何百万年も前から、食べものを変えたりしながら、季節の変化とともに進化してきました。
BOS財団もまた、そうした自然のサイクルに合わせて現場のサポート体制を柔軟に整えながら、リハビリ中のオランウータンたちが野生へ帰るための準備をしっかり支えています。
オランウータンたちが森で学び、成長し、いつか本来の生息地である野生の森へ還れるように、日々の見守りとケアを続けています。
投稿日:2026年9月24日
執筆:BOS財団本部 コミュニケーションチーム(西ジャワ州ボゴール)
編集・翻訳:Borneo Orangutan Survival Japan(BOSジャパン)




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